自分のこの体が、嫌いだ。
いままで当たり前であった自分のこの巨体が、この眼が、爪が、牙が。
全てが彼女を傷つけそうで、どうしようもなく憎らしい。
そこで彼女は笑っているのに、手を伸ばし触れることすら躊躇われてしまう。
でも、そんなことを言っても彼女はやっぱり優しく微笑むのだ。
「あなたが好きよ」と
そして、この鋭い爪に触れて、そっと視線を絡ませる。
「いつも注意深く爪で傷つけないようにするその配慮とか
他には見せない柔らかい眼差しとか
ぎゅっと抱きついた時に満たされたきもちになれるその大きな体も」
「ぜんぶ、好きよ」
「だから、傍に居ることを、恐れないで。怖がらないで
私は、あなたのことで傷ついたりしないから。
触れたいときには、触れて。
わたし、こんなにも傍に居るの。
私を、求めて」
その声が、空気が、微笑が、もうどうしようもなく愛しくて、優しくて。
おもわず抱きしめる。
ああ、なんて温かいのだろう。
[08:傍に居ることを怖がらないで]