【君で変わっていく十のお題】 ミルクティー

 ティアナと居ると、私は首が痛くなる。
 彼女の体はとても小さく、私はいつも下を向かねばならないから。

 ティアナと居ると、私はどうもこうもよく転ぶ。
 彼女の歩幅はとても狭く、あわせて歩くのは至難のわざ。
 一日に何度自分の足につまづいたことか。

 ティアナと居ると、私は自分の不器用さに愕然とする。
 人間のその指の細かく動くことといったら。
 私は卵一つも満足に割れやしないというのに。

 ティアナと居ると、私は妙に子供に懐かれる。
 昔は恐れられていたのが、今では山登りでもするかのよう。
 いつもティアナが乗っているから、子供は羨んでいたのだ。

 ティアナと居ると、私は筋肉痛になる。
 私の顔の筋肉は、表情を作るのには向いていないんだ。
 だから、そんなに笑わせないで欲しい。

 ティアナと居ると、私はとても疲れる。
 彼女はよく笑い、泣き、怒り、その上に無鉄砲でお節介。
 そんな姿は私の前だけでいいものを、彼女は誰にでも振りまくから。


 ティアナ、
 君と居ると私は疲れるし、ショックも受けるし、何と言ってもわずらわしいことばかりなんだ。

 それなのになぜだろうな

 それが、そんなに嫌いではないんだ。

「エドヴァルド? ぼーっとしてどうしたの」

 その名を呼ばれるだけで、胸の奥が、苦しくて、温かい。

 彼女は、何も知らないでミルクティーを啜っている。

 そう、この気持ちはきっとこのようなもの。

 いつか、混ざり合って、溶けあって、苦味も甘味も一つになるのだろうか。

 今は苦いのか、甘いのか。それはわからないけれど。

「好きなんだ」

「ミルクティー、エドヴァルドも飲みたいの?」

 君のことはもちろん、君のことに手を焼いている愚かな自分も
 これがなかなか

「あぁ、好きだ」

 好きだから、始末が悪い。

[06:君と居る時の自分]



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