第6話: 日常茶飯事なこと 1 BACK | INDEX | NEXT 2010/10/20 update |
先日この城に連れてきた少女は、名をセティと言った。とりたてて褒める所もこき下ろす所も無いよくある名だ。 容姿もこれといって取り上げる部分も無い。よく言えば確かに可愛い顔立ちをしているが、やはり十人並みといったところ。男を惹き付ける危うげな儚さも艶やかさも知らなさそうだ。 はっきり言えば、これなら城にいるメイドと大差ない。しがない町娘であると本人が言うくらいだし、やはりうしろだてなど全く持っていない。この国の王子である自分が彼女を娶って得るメリットなど微塵も無いだろう。 だが、確かに王子としての自分にはメリットが無いかも知れないが、自分自身どうなのかと言われれば、 「……我ながら、見る目があるというか何と言うか」 思わず口に出てしまうほど、この少女に惹かれている自分がいる。 「何か言った?」 「いや、君が可愛くて仕方ないと思っただけさ」 「……あんた、下手したらとっても痛くて寒い人よ。今の発言」 言葉では呆れながらも、それでも顔を赤らめてしまうところが、また面白い。 貴族の娘ではこうはいかない。知的な皮肉一つでもこめて反撃してくるか、そのまま蜜事に運ばれてしまう。今までならそれはそれで悪くなかったが、今では彼女以上に興味をそそられるものには成り得ない。 そんなことを考えると、きっと彼女は彼女以外に何も持たないからこそ、ある意味で美しいのだと思う。だから、そんな着飾らない美しさだから、こちらも思わず手を出したくなるのだ。 「セティ」 「ん?」 「そろそろ我慢ができなくなってきた」 「……はい?」 目を白黒させている彼女を、やんわりと押し倒した。もちろん、そのまま「いただきます」なんて事はしない。ちょっとしたからかいで慌てふためく彼女が見たいだけなのだから。 第六話 了 |
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