第1話: 呪うべくは足のサイズ 2 BACK | INDEX | NEXT 2010/10/20 update |
そもそも、ことの発端は二週間前に遡る。 この国の王様はそろそろ年で寝込むことが多くなり、実質政治は王子が主体となっている。その王子は「美形」って言葉をを具現化したような顔立ちで、かつ思慮深い聡明な……と以下延々礼讃が続くような人らしい。あくまで噂なのだけど、まぁそういう人なのだ。しかしそうとなればもちろん貴族の娘さんたちにも熱烈な支持を得ているはず。それなのにも関わらず、王子は何故だか一向に結婚をしようとしない。 国を担う王子が「いつまでも未婚じゃあねぇ」という世話好きの乳母と、王様の初孫見たさもあり、先日とうとう王子の婚約者を探すパーティが開かれたわけだ。もちろん国中の年頃の娘(自分が年頃だと思えば何歳でもOKというわけではない)は一応全員参加とのおふれが出ており、もちろん私にも招待状が来た。 さて、ここで確認したいことがある。 私はその日確かに舞踏会に行った。タダで王宮のフルコース料理が食べられる機会を逃すはずが無い。フルコース料理どころか、友人と三人でルームシェアをしなければ、家賃滞納で日々の食事すらままならないのだから。 だから私たち三人は、「舞踏会」つまり踊りに行ったわけではなく、むしろ「食」を求めてお城へ行ったわけで。もちろん王子なんぞとは一度も会ったことがない。それどころか食べることに夢中で、おそらく王子の顔すら見ていないのだ。 後の噂で、「王子様が、ガラスの靴を履いた美女といい感じになっていた」とか聞いた気もするし、その娘探しが現に行われていた。だけど、一般庶民の私には全く外の世界……のはずだったのに。 今、半ば誘拐の形で私は馬車に乗せられている。さてこれは何故か。 「ど、どこへ行くつもりなの」 「どこって……もちろん王城ですよ。おふれに出しましたでしょう? あのガラスの靴がピッタリの娘を王子の妻に迎える、と」 「こんなの、嘘だー!!」 私の叫び声は町の雑踏に掻き消された。 |